ゆりかもめが帰る日 〈後編〉

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       〈後編〉

 

大きな手でしっかりつかまれて地上の道への階段を上がる。

わざと体重をかけてみる。


「こら・・・盆と正月だからって、そんなに甘えるな。」

「盆と正月だから、まだ甘え足りない。」

「あ・・・これ、もともとの体重か・・・」

「違うよ!」


カップルの浮かれた会話のようで、
急に恥ずかしくなったのは私だけじゃなかったようだ。

プッと吹き出しながら地上の歩道に出たとたんに、
さっさと手を離す二人だった。

ちょっと寂しかったりもした。


「今日も回顧展の準備だった?」

「あぁ。午前中はおじさんとおばさんがわざわざ来てくれて打ち合わせだった。」

「あ、そっか。そういえば、朝そんなこと言ってた。」

「お前だけだ、ぶらぶらして気楽そうなのは。」

「・・・・うん。」

「・・・ん?・・・」

「ん?・・・」

「素直だ。」

「・・・・」


鴻の家は大きな画廊を経営している。

草木画廊。

もともとの場所は、古くから美術品の店や画廊が並ぶ、
画廊通りと呼ばれる通りの、白居堂と同じ並びにあった。
小さな間口の古い構えだった。

鴻のじいちゃんと私のじいは、
地元の美術学校で同期だった。
今の芸大の前身だ。

“専攻は日本画と美学でそれぞれだったけど、
なぜか不思議にウマが合った”

じいが私たちを前に初めてそんな話をしたのは、
鴻のじいちゃんの七回忌の時だと思う。
私たちは中学生だった。

 

今から30年近く前、
ビジネスの手腕があった鴻のじいちゃんは、
国立と市立の伝統ある美術館が並ぶ通りに、
以前の10倍はあろうかという広さの画廊をオープンした。

そして勢いが止まらない鴻のじいちゃんは、、
オークションでルノアールとドガを落としたのだ。

その二つの絵のお披露目をメインにしたパーティーがあった。
その時のことをぼんやり憶えている。
幼稚園に通っていた鴻と私は、
その華やかさにとにかく興奮して走り回り、何度も母親たちに叱られた。


その日鴻のじいちゃんは、
所蔵する全ての絵をコレクションルームに飾った。

それを見て、私のじいは怒って帰ってしまったらしい。

いたずら好きな鴻のじいちゃんは、
ルノアールとドガの間に、
同じくらいの号数の、うちのじいの絵を挟んで並べたのだ。
じいちゃんの絵も、れっきとしたコレクションの一つにかわりないのだと。

日頃からつきあいのあるメンバーの内輪のパーティーなので、
ちょっとしたシャレのつもりだったかもしれない。
彼らしいやりかたで、じいに友情を示したのだろう。
同等に大事で価値ある絵だぞっていうことだろうか。

だけど、じいは喜ばなかった。

「私はもちろん自分の作品に誇りを持っている。
しかしこれでは・・・
コレクションする側の、作品への愛も敬意も哲学も・・・
なにも感じられない。」

そんなふうに、みんなの前で言ってしまった。
その場がし~んとなって、
それでもはしゃぐ私たちは母たちの手で退場となった。
そこは憶えてないけど。


「いろんな意味で、
今のお前はあまりにも節操がない。
・・・草木、私は悲しい。」

そう言って帰ってしまったそうだ。


そもそも、二人は全部違った。

いつも強気で自信満々でギャンブラー。
海外のオークションに出て行き、
億単位の作品を手に入れてしまう鴻のじいちゃん。

アトリエで小さな弟子たちに囲まれながら、
ただただ描くことを喜びにしていたうちのじい。


「私と彼の世界は、すでにあまりにもかけ離れている」


ぎくしゃくした関係は尾を引いて、
毎年そこで開いてた個展も翌年から別な画廊となった。

双方の家族は胸を痛めた。
ほんとはそれぞれの妻が妬くほどの仲の良さだったのに。
違うからこそ引き合って、支え合って来た今日までの日々だったのに。

そして数年後にようやく個展復活の話をきっかけに和解した矢先、
鴻のじいちゃんは逝ってしまったのだ。

お互い意地っ張りだった無二の親友同士にとって、
最後の空白がどんなに悔やまれただろう。

 

「じい、あっちで鴻のじいちゃんに会えたかな。」

「あぁ。もう会ってる頃かもな。」

「ほんとに?ちゃんとみつけられたかな。」

「そうか・・
うちのじいちゃん若いままだから、
20年近くたった先生をみつけるの厳しいかな。
先生からみつけてくれないとな。」


「ふふ。けんか別れした恋人同士の再会みたい。」

「・・・・」

「鴻?・・・」

「早月。」

「何?・・・」

「お前と8年も離れたままだな。」

「・・・鴻・・・」

「帰ってこないか。」

「・・・・」

「帰ってこいよ、こっちに。」

「・・・それって・・・もしかして・・・」

「ん?・・・」

「愛の告白とか?・・」

「は?・・・」

「・・・いや、言ってみただけ。」

「そうか。」

 

鴻、いつもこんなふうだ。

東京に行かずにこの8年をずっとこの街にいたら・・・
私はどうしただろう。

小学校の頃からずっとモテモテで、女の子の扱いが上手で、
適当に楽しくやるけど一人の人と長続きしない鴻を、
嫌いになったりしただろうか。


私は小学校の時から鴻のモテ具合を横目で見ながら呆れていた。

“みんなバッカじゃないの?
そんなにかっこよくないんだよ、こいつ。”

なんて思ってた。


真剣にキャンバスに向かってると思ったらいきなりオナラしたりするんだよ。

ちゃんと切り分けてもらったケーキを、横向いてる間に取って食べちゃうし、

デッサンのためにじいが置いたぶどうもデッサンしながら全部食べちゃって・・・

そうだ、私の赤ちゃん人形にどんどん紙ねんど貼り付けてって、
色塗ってとうとうミッキーマウスにしちゃったんだよ!

 

鴻に彼女ができるたびに、そんなこんなをバラしたい衝動にかられ、
そのうち別れたと噂を聞くとホッとしたりした。


そしてある日、自覚した。
私は鴻ばかり見ていると。

 


あぁ・・・

なんだかとてもムカついてきた。

 

「・・・鴻・・・」

「なんだ。」

「鴻!!」

「な・・・なんだよ。」

「緊急事態のせいで忘れてた。」

「何を?」

「あんたがほんっとに、いいかげんなやつだってこと。」

 

そう言いながら、ちょうど青になった横断歩道を
鴻なんか置いて大股で歩きだした。


「こらっ・・・ちょっと待てよ。」

腕をつかまれ引き戻される。

「なんでよ。やめてよ。
電車乗るんだから。」


「なんで。」

「なんでって・・・帰るのよ。」

「なんで帰るんだよ。」

「なんでって、なんでよ・・・」

「だめだ。」

「いやだ。離して。もう帰るんだから。」

「帰るなよ。まだ帰るなよ。」

「わかった。
じゃあ聞きます。
あなたが私を引き留める理由は?」

「そりゃあ・・・」

「なに?・・・」

「ぜんざい食わなきゃだから。」

「・・・!!!・・・」

「ん?・・・」

「鴻・・・」

「ん?・・・」

「帰るっ!!」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 


もう、戻らないとな・・・


慌てて出てきた東京の部屋が、
どんなふうな状態だったか、よく思い出せない。
急な知らせに動転していた。

鍵はちゃんと閉めただろうか。


もしかして、ベランダに洗濯物を干したままかもしれない。
炊飯器にご飯が入ったままかも。

「倒れた」とだけ聞かされたが、
その時じいはもうこの世にいなかった。
今はそれだけ伝えようと、鴻が父に言ったそうだ。

鴻は正しかった。
倒れたと聞いただけで、私はあんなにもうろたえた。

準備しようと部屋の中を右往左往してできたらしいアザが、
葬儀を終えてからあちこちにみつかった。

ほんとのことを聞いていたら、
ちゃんとここまでたどり着けなかったかもしれない。

 

大学に入学した18の時から8年間、
ずっと同じ部屋にいる。

その間に大学生から会社員になって、
また今は学生の身分だ。

最初に芸大ではなく文学部に進んだことを後悔してはいない。
また描きたいという思いが湧いてくるために、
ちょうどそれだけの時間が必要だった。

そのことが今になってわかる。

就職した会社を辞めて専門学校に入ったことを、
じいに特に報告もしなかった。
なんとなく言いそびれた。
どうせ違うルートから耳に入るだろうけど、
じいの予想のとおりになったようで、
悔しい気分もあったかもしれない。

 

ほんとに・・・

今日まで生きてきて、
「たとえば」とか「もしも・・・だったら」
なんて考えたことなかった。
その時その時選んだ道を後悔なんてしなかったのに、
じいに関してだけは別だった。

グルグルと同じ問いばかり自分に投げている。

なんでもっと度々帰ってこなかったんだろう。
今の私はこんなだよって伝えていれば、
じいからどんな言葉が返ってきただろう。
どんな笑顔が返ってきただろう。

へんなこだわりなんか捨てて、伝えればよかったんだ。
またこんなに描きたくなったんだよと。


あんなに嫌いで「くさい くさい」と逃げてた膠の匂いを、
無性に懐かしく思い出すことも。

キャンバスの下地塗りをする時の、
じいの刷毛さばきがすごくかっこいいってことが、
他の人のを見てよーくわかったことも。

SATUKIの名前でコンクールに入選したことも。


そして、このアトリエ・・・

じいが描いてるそばで宿題をし、本を読み、眠り・・・
そして背中合わせでキャンバスに向かったこのアトリエが、
ずっとずっと、猛烈に恋しかったってことも。


全部全部、話せばよかった。

 


主のいないアトリエで、ソファに丸まっていた。
3時間をすぎて、ヒーターがブザーを鳴らして勝手に切れた。

寒い。

でも、立ち上がってボタンを押し直す気力が湧かない。


窓の外にちらちら小雪が舞い始めた。
季節最後の雪かもしれない。


低い垣根の向こうに川が流れ、その向こうは大きな神社の森だった。
そして遠くには県境の山が見える。

いかにも日本画家のアトリエだ。
ソファにうずくまる怠け者にも、
こんなにすごい借景を見せてくれる。


じい・・・
雪が降り出したよ。
絵みたいにきれいだ。


じい・・・

ごめんよ。

ごめんよ。

ごめん・・・


古くなったベンチが小雪の中で寒そうにしている。
ここから16才の私をスケッチしたんだな、

『猫背の早春』か・・・


10年前となにも変わらない。
じい・・・
私は今も、ここでこうして丸まってるよ。

 

風もなく、動くのは舞い落ちる雪だけ。

そんな一幅の絵の中に、不意に登場したのは、
この浮世離れした眺めにも違和感なくとけ込んでしまう男だった。


明かりもつけないアトリエに私がいるかを確かめてるのか。
窓ガラスに顔を近づけてのぞき込む。

動かずにじっと丸まったままでいた。
目だけは彼をにらみつけて。

白い歯がのぞいた。
やっぱり気づかれた。
当たり前だけど。

 

このアトリエに窓から出入りするのは、
うちの家族と鴻だけだ。

鴻は家族よりこのアトリエを熟知していて、
たぶん家族よりじいに近かった。
じいの言葉を一番たくさん聞いたのも、
絵を描くじいの姿を一番たくさん見たのも、
たぶん鴻だ。


窓が開いて、閉まって、
忍び込んだ冷気に身震いした。


「なんでヒーター消してるんだ。
また熱出すぞ。」


“また”って・・・
10年前じゃん。


ヒーターのボタンを押したその指で明かりのスイッチを押そうとする。


「やめて!」

「ん?・・・」

「お願い。つけないで。」

「・・・・」


きっと鴻は、私が泣いていたことを知っている。

鴻は自分のコートを脱いですっぽり私を覆った。

「部屋が暖まるまでな。」

そして、慣れた手つきでコーヒーを淹れはじめた。


「おばさんが、腹減ってないかって。」

「へってない。」

「じゃあこれとコーヒーだ。」


私をくるんでるコートのポケットを探って、
鴻が取り出したのは色とりどりのマカロンだった。
ひとつひとつ透明な袋に入っていた。
テーブルに並べると、大きなおはじきのようだ。

あとからあとから出てきて、
私はついクスッと笑ってしまう。


「あ、笑った。」

「・・・・」

ふっと笑った鴻の目も潤んでるような気がした。

 

 

明かりをつけないまま、ソファに二人並んでコーヒーを飲んだ。
テーブルにはマカロンが並ぶ。


「おいしいね、マカロン」

「お前、好きだったよな、小さい時から。」

「うん。」

「俺はぜんざいのほうが好き。」

「あ・・・、もしかして根に持ってる?」

「当たり前だろ。食いたかったんだから。」

「じゃあひとりで行けばよかったじゃん。」

「お前のおごりじゃなきゃ意味ないだろ。」

「はぁ?」

「お前を連れていきたかった。」

「・・・・」

「中村屋のおばさん、元気だ。
葬儀にも来てくれた。」

「え?・・・」

「ほんとに行こうぜ、今度。」

「うん。」


夕闇が降りてきて、雪の白さが密度を増した。
このまま降り続くと、明日の朝は白い世界かもしれない。

 


・・・そんな朝もあった。

 

「早月、見てみろ。まるで水墨画のようだろ。」
と、じいが言った。

小さな私は
「ほんとだ。すごい!きれい!」
そう言ってぴょんぴょん飛び跳ねた。

 


「ねえ。」

「ん?」

「このソファ、なんで窓を向いてるの?」

「先生が倒れる前の日、梅を見ながら二人で酒飲んだ。」

「・・・・そう・・」

「お前の、誕生日だったから。」

「・・!!・・・」

「『イイナズケだろ。一緒に祝え』って。」

「・・・・・」


もう嗚咽をとめることはできなかった。
顔を覆って泣いた。

震えながらいつまでも泣く私を抱いて、
鴻も泣いていたかもしれない。

 

泣きやむ頃には、やっと部屋も暖まっていたけど、
鴻は私を離さなかった。

広い胸にもたれながら、
いつまでも雪を見ていた。

 

「明日、積もるかな。」

「そうだな。」

「楽しみだ。」

「早月・・・」

「ん?・・・」

「帰ってこいよ。」

「・・・・」

「俺、待ってるから。」

「・・・・」

 

 


ーーーーーーーー

 

 


・・・一年後・・・

 


新幹線の改札を出ると、そこに鴻が待っていた。


人波の中で動かずに、まっすぐこっちを見る目は、
遠くからでもすぐみつけられる。


私の荷物を引き受けながら、
「卒業おめでとう。」と言った。

「ありがとう。」

「おかえり。」

「ただいま。」

「こっちは寒いだろ。」

「うん。」

 

車が変わっていた。
カジュアルなワンボックス。


「ゴージャスなヤツは、どうも馴染めない。
親父もじいちゃんと同じ趣味だったからな。」

半年前にお父さんから譲られてオーナーになった。
鴻の初仕事は、彼の父が断行できなかったコレクションの売却だ。
もちろん、ルノアールとドガも。

高級志向の画廊から路線を変えた。
若いアーティストの作品も積極的に紹介しはじめて、
客層が広がった。

いいなと思う作品に出会うと、
作家に会いにどこまでも出かけて行って話し込む。

「惚れた作品を世に出したいんだ」
「ちゃんと創作で食っていけるようになってほしいんだ。
だから、作品がちゃんと売れるようなギャラリーじゃないと・・・」」
って、最近の口癖。

東京に来るたびに、居酒屋で焼酎を飲みながら
これからの画廊の計画を夢中で話す鴻だった。

     “なあ、どう思う?”
     “こういうのって、ありだと思うか?”
     “早月ならどうする?”
     “早月、賛成してくれるか?”


トンボ帰りを見送る新幹線のホームで、
いつも鴻は私を抱きしめた。

「鴻、居酒屋の匂いプンプンだよね。
隣の席の人、かわいそう。」

「じゃあ、早月が隣に座れよ。
一緒に帰ろう。」

「・・んふ・・鴻、酔ってるね。」


ほんとに一緒に電車に乗ってしまいたかった。
このまま新幹線の中もずっと手をつないで、
鴻と帰りたかった。

 

・・・そんな時間を重ねた1年だった。

 

「やっと帰ってきたな。」

「うん。」

 

 

ーーーーーー

 

 

一周忌を無事に終えたある日、
買い物の途中にふと思い立って川辺に下りた。

1年前の情けない自分を思い出して、苦笑いが浮かぶ。


ゆりかもめが相変わらず寒い水面に足を浸している。

ちっとも辛そうに見えない。
それは私が今、辛くないから?
ほんとに、見る人の心そのままだ。

 


ポケットの中が振動して、予感のとおり鴻だった。

“今どこ?”

“ホテルフジタのあたり”

“え・・・マジか?”

“マジです”


思わず笑いがこぼれる。


今日はやっぱり暖かいな。
足が痛くない。


“おい、そこのちっとも寒そうじゃない女子、
またの名を、僕の大切なイイナズケ。
橋の手前のその階段を上がってきませんか?”

 

マジだわ・・・・

去年と同じ場所に、同じように腕組みをして立っていた。
その笑顔は、去年と同じまぶしさだ。


“うぅ~ん、まだまだ余裕で歩けるけど、
それでも迎えに来てほしい。”

“甘えるな。”

“じゃあいいや。明日甘えることにする。”

 

だけどほら、もう鴻は下りてきてしまった。


「なによ、去年みたいな根性ないんだね。」

「我慢できなかった。」

「何を?」

「ここでいちゃつきたくて」

「・・・なに・・ばか・・・」


痛くない足で逃げ出した。


「なんだよ、去年は素直に抱きついたくせに」

「今年は大丈夫、寒くないから。」

「俺はただのヒーター代わりか?
こら、待て!!」


バカなカップルは鬼ごっこに疲れ、
結局私は去年と同じに、大きな手にぐいぐい引っ張られて、
地上の道へと階段を上がる。

 

「早月。」

「ん?・・」

「ほんとに、ここに帰ってきたんだな。」

「うん。」

「あぁ、これでやっと食えるよ。」

「何が?」

 

鴻が耳元でささやいた。

「ぜんざい。」


「はぁ?・・・」

「早く行こう。」

 

二人の後ろで大きな羽音がした。

振り向くと、今日のねぐらへ帰るゆりかもめたちが
一斉に飛び立ったところだ。
あっという間に高みへ舞い上がる。


「もうすぐほんとに北に帰るんだね。」

「あぁ、そうだな。」

「嬉しいだろうな。」

「そうか。そう思うか。」

「ん?」

「それは早月が今、嬉しいからだろ。」

「あ・・・」

「帰ってきて・・・嬉しいか?」


のぞき込む鴻の顔が笑ってる。


「うん、まあね。」

「ちゃんと言えよ。嬉しいって。」

「んふ・・・嬉しいです!」

「あは、俺も、嬉しいぞ~~!!」


遠ざかっていくゆりかもめたちに叫んでも、
彼らはもう黒い点に近い。

すぐに見えなくなった。

 


君たちも、もうすぐだね。

ちゃんと帰るんだよ。

君たちの、その場所へ。

 


帰るんだよ。

   見失わずに。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
この物語は、私が創作を書かせていただいているサイト
「Moonbow's Path  ~ silverblue's nest ~」( ○ttp://www.geocities.jp/silverblue_web/ )
で、2010年2月に書かせていただいたものです。
少しの修正加筆の上、こちらにUPとなりました。

 


 

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